Пистолет Макарова
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携帯。昨夜の番号。知人だった。3年ほどまえに知り合い、何度か飲んで他愛のない話をした。あれ以来だ。自衛隊上がりだが物腰が柔らかく、穏やかな男。
沖縄。
故郷だという。
島の暮らしに不満はない、しかし刺激がないとも言った。
”何か仕事があれば手伝わせてくれないか?”
”手は足りている。今の暮らしをエンジョイしろよ”
電話を切った。
サンドウイッチで軽い昼食を摂ると、事務所の掃除をはじめる。書棚。分厚い六法の間から、見たこともない虫が這い出た。瞬間、図鑑で調べたい衝動に駆られるが、嫌悪感の方が勝り、手元にあったスプレーを取ると勢い良く吹き付けた。動きが止まる。仕留めたか?コロコロで取ろう。動いた。さきほどより動きが良い。何故だ?スプレーの缶を見た。
しまった。そういうことか。コロコロに鱗粉を残して虫は去った。
刺さない虫だと良いのだが・・・仕事を手伝いたいと言った、自衛隊の顔が浮かんで消えた。
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鼻を衝く匂い・・・芳香剤?
初老の男のキレイに剃られた頭が部屋に消えた。インタホンを押す。鳴らない。ノック。・・・12秒。男が顔を出す。表情に動揺はない。
”何?”
”すみません、ここに○○さんって住んでいますよね?”
”は?”
”○○さん。住んでいますよね?”
”あんた誰?どういう関係?”
今度、同窓会があってその仕切りを請け負ったイベント会社だと名乗り、名刺を出す。連絡方法がなくて、仕方なく自宅に来たとも言った。
”そいつは残念だったね。今日は留守だよ”
”そうですか。では日を改めます。失礼ですが・・・”
”アタシ?アタシは管理人だ”
”ここの?”
”ああ・・・”
”そうですか。ここって管理会社が入っているんですよね?ええと、なんて言いましたっけ?”
”・・・管理会社っていうか、本人から頼まれているんだよ”
”ああ、身内の方ですか?ですよね?他人が勝手に部屋に入りませんよね?本人がいないのに・・・”
”当たり前だよ。・・・アンタ、刑事(デカ)みたいだね”
”ははは。いつ来たら○○さんにお会いできます?”
”わからないな。アタシは週に一度こうして換気に来ているだけだから”
管理人。態度。週に一度の換気。”デカ”。全て臭う。芳香剤以上に。
引き際か。さっきから携帯がポケットの中をくすぐっている。爺さん、近いうちにまた会うぜ。
薔薇とナイフ
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その朝、A社ビル・玄関前は賑わった。他社より少しでも多くの商品を持ち帰ろうと殺到する債権者たち。しかし倉庫に商品はなく、事務所も蛻の殻。デスクにわずかな書類が残っているだけだった・・・
今から8年前の話だ。
A社で経理をしていた女。39歳。それが今回の対象者。
横領の疑い。しかしあくまで飲み屋の世間話程度のものだ。
その世間話から女が乗っていた車の情報。住所を割り出す。横浜の外れ。以前来たことのある街だが昼と夜ではまるで表情が違った。飲み屋の看板が目立つ。細い路地。”pay dirt!”グリーンのワゴンR。1Fが美容室のマンション。202号。ポストに郵便物はない。

2Fへ。表札はない。メーターは僅かに回っている。不意に背後から階段を上がってくる気配。身を隠す。初老の男。右手に鍵の束。202のドアを開けた・・・
薔薇とナイフ
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18:18。1時間待った。メモにあった時間は17:20。空振りか・・・
通りに1台、黒塗りの国産セダンが止まった。御約束のフルスモークで、車内は見えない。 撤収準備を止め、そのまま動向を探る。
車の前後のドアが開き、降りて来たのは男が二人。通常二人乗車なら運転席と助手席を使用する。車内にも仲間がいるのか。一人は175センチ痩せ型。もう一人は170センチのガッシリ。二人は周囲の様子を窺うでもなく真っ直ぐに目的の場所へ向かう。家の前で立ち止まりインタホンを探すでもなくガラスの引き戸を叩く。”すみません”痩せ型の猫なで声が神経に触れて来る。ガッシリは背中合わせに周囲を窺っている。しばしの間の後、二人のやりとり。続いてメモを出した。書く。引き戸に挟む。二人は家に背を向けた。私はメモを抜き取り、読んだ。引き戸を開ける。その音に振り返った二人の表情が固まる。
私は言った。
”用件は何かな?”
痩せ ”え?”
”俺が代わりに聞くよ”
痩せ ”何のことですか?”
”とぼけるな” メモを見せる
ガッシリ ”兄さん、言いがかりか、あ?”
ガッシリが明らかに殺気を放ち、前蹴りが来た。私は膝で受け、そのまま内腿を蹴り上げる。ガッシリはバランスを崩して膝を着いた。
痩せ ”私たちは役所の者で・・・”
”止せよ、もうはじめちまっているんだ”
ガッシリ ”先に車に行ってろ”
痩せ型、頷いて車に走る。
ガッシリと向き合う。ガッシリがポケットに手を突っ込む。ナイフを呑んでいるのか。私は自分のBUCKを身に着けていない。銃刀法違反なんて御免だ。
ガッシリがタバコを出した。
ガッシリ ”済まん、そんなつもりじゃなかった”
”誰を騙して金を取ろうと知らんが、俺の前では許さない”
ガッシリ ”この地域は年寄りが多いって聞いたもんで・・・”
”うせろ”
セダンから仲間は来なかった。走り去るセダン。
金の為に平気で弱者を騙す連中。お前ら、格好悪いよ。
薔薇とナイフ
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今日は久々の休みだ。
気が済むまで眠ってやる。尤もこの稼業にはタイムカードなど無縁、起きだす時間も自分の思うままなのだが・・・
そんなことを考えながら再び床につこうとすると、テレビで奈良の放火殺人事件をやっていた。ひと月もあれば皆忘れるだろう・・・10分経ってしまった。寝よう。
電話が鳴った。ほとんど反射的に出る。
情報。その土地は戦後から市の所有だったため番地の分割がされず郵便物の誤配が生じていたという。面倒はそのあとだ。何者かが、郵便物の宛名を見て振り込め詐欺をしかけたのだ。ポストに残されていたメモにはこう書いてあった。”支払いが確認できず当方は非常に困惑している。このままでは公正証書作成手続きに入らなければならないので至急連絡をください”意味不明だ。メモには2名分の氏名と携帯の番号も記載されていたので掛けてみたがどちらも一向に出ない。次に誤配された郵便物の差出人である某企業に連絡を入れる。今度は出たので、例の2名の存在を確かめる。やはりそういう人間は在籍していなかった。メモには御丁寧に訪問時間も記されていたので、張り込んで見るとしよう。ただこの件に関してはあまり気乗りしない。知り合いのことなので報酬は期待できないからだ。やれやれ、ボランティアか・・・
薔薇とナイフ
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